HARS Global

【イベントレポート】KPI再設計から始まるアプリマーケティングの再構築

森下 明(Akira Morishita)/Founder / CEO

1988年三重県生まれ。東京理科大学理工学部を卒業後、株式会社マクロミルに入社。その後、広告代理店やソーシャルゲーム開発会社でアプリマーケティング業務に従事。
2018年に株式会社ブシロードに入社し、アプリマーケティング部門の立ち上げに携わる。広報宣伝部副部長を経て、2021年9月よりシンガポールに拠点を移し、Bushiroad International Pte. Ltd.のHead of Mobileとして活躍。CEDECやアドテック東京、Abema Primeなどで多数登壇。Bond University MBA修了。

2021年12月にはインプレス出版から「いちばんやさしいアプリマーケティングの教本」を発刊。Amazonの専門カテゴリで1位を獲得。

2024年5月にはHARS Global Pte. Ltd.をシンガポールにて設立し、グローバルマーケティングのコンサルティングおよびエージェンシー業務を展開。マーケティング関連の記事執筆にも取り組んでいる。

  • 80名超が集結した熱気ある会場
  • 平日夕方にもかかわらず会場はほぼ満席。アプリ事業者やモバイルマーケターが多数参加し、登壇前から熱気に包まれていました。
         

  • 実務に直結するテーマで活発な交流
  • 講演中は多くの参加者がメモを取り、終了後には名刺交換や情報共有が盛んに行われるなど、実務に直結するテーマへの関心の高さが際立ちました。
         

  • 前向きなフィードバックと学びの場に
  • 「現場で即活かせる」「チームに持ち帰りたい」との声が多く寄せられ、アプリマーケター同士の学び合いや視点のアップデートに繋がる有意義な時間となりました。

2025年8月20日、HARS Global代表・森下明がモバイルマーケティングの大型カンファレンス「Mobile Stars Summer 2025」に登壇し、各業界の第一線で活躍するマーケターを対象に「アプリマーケティングにおけるKPI再設計」についてお話しさせていただきました。

■ KPI設計は“可視化”ではなく“意思決定のための装置”“

セッション冒頭では、KPIを「顧客理解を通じて売上・利益を最大化するための視座」と定義。よくある「とりあえず数字を取る」「とりあえず改善案を出す」といった形式的な設計を抜け出すために、以下の3つの思考フレームを提示しました。

・大きさで分けて考える:売上インパクトや市場規模から優先順位を明確化
・比較して考える:競合・類似プロダクトとの相対評価で立ち位置を把握
・時間軸で考える:リリース後のKPI変化をもとに将来予測を立てる

これらの思考は、課題の構造を解像度高くとらえるために欠かせないものであり、KPIをただ“見る”のではなく、“使う”ための設計が必要なものであると伝えました。

■ “診断”だけで終わらせないKPI分析――処方箋まで落とし込む実践

講演中盤では、「KPIの可視化はあくまで入り口。問題の特定と具体的なアクションにつなげることがマーケターの役割である」と指摘。特にゲームアプリのように一部ユーザーの売上貢献が極端なプロダクトでは、「上位10%が売上の90%を占める」といったクラスター構造を読み解き、どのユーザーにどの体験や報酬設計を届けるべきかまで踏み込む必要がある点についてお伝えしました。

■ LTVとCPAのバランス設計、n日LTVという現実的な投資判断軸


広告投資の回収設計に関するセクションでは、「n日LTV ≧ CPA」の公式に触れながら、n(日数)の設計こそが実務上の判断軸になる点についてお話ししました。
たとえば回収期間nを長く取れば投資余地は広がりますが、資金繰りや事業リスクも増大します。こうしたトレードオフに対して、財務・開発・プロダクトとの連携が欠かせないとして、広告予算は単なるマーケの意思決定ではなく、経営的意思決定であるべきとお話ししました。

■ “縮小最適型マーケター”の落とし穴と、あるべき姿勢

セッション終盤では、実務で陥りがちな「縮小最適型マーケター」の例を複数紹介しました。
・データの微小変動に一喜一憂する「ダッシュボード中毒」
・ターゲットを絞らずメッセージが曖昧になる「みんなターゲット病」
・先行指標(CPAやリード数)に固執する「数字妄信型」など

これらは一見正しく見えますが、プロダクトや顧客への本質的理解が伴わないまま施策を繰り返し、結果的にマーケティングの意義を損なうリスクをはらんでいます。
マーケターに必要なのは、「知的好奇心」「執着力」「現場に触れる感覚」だと語り、自身も国内外で顧客接点を観察・体験することで、定量・定性の両面からの洞察を深めていることをみなさんと共有しました。

■ KPIを共通言語に──マーケターが事業の横断者になるために


最後に森下より、KPI設計がマーケティングのためだけでなく、「経営・開発・運用と会話するための共通言語」であるとお話ししました。
そのうえで、「売上や利益を最大化するために、マーケター自身が組織の横断者として責任と裁量を持って意思決定に関与すべき」として、“誰かのための数字”ではなく、“自分たちの未来のための数字”を扱える人材が、これからのマーケターに求められると締めくくらせていただきました。

今回の登壇を通じて、日本のアプリマーケターやゲームパブリッシャーがグローバル市場で成果を出すための戦略や組織設計に、より強い関心と危機感を持ち始めていることを改めて感じました。KPIの再設計や分析手法だけでなく、海外展開における意思決定・投資判断の精度が求められているという実感があります。

HARS Globalは今後も、海外マーケティングとアプリ開発を両軸で支援できるパートナーとして、より深くクライアントの事業に伴走してまいります。プロダクト理解と市場理解の両立、そして戦略と現場をつなぐ思考設計を強みに、日本発のプロダクトが世界で選ばれるための土台を共につくっていきたいと考えています。

    当日、国内最大級のスマホアプリ特化メディアであるアプリブさんに取材いただき、セッションレポートを掲載いただきました。
    記事はこちらです。ぜひお読みください。

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  • https://harsglobal.com/news_jp/810

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